イーキャリアNEXTFIELDの生みの親、プロ野球選手会森事務局長インタビュー
「イーキャリアNEXTFIELD」は、引退後の選手のキャリアへの問題意識を持つ日本プロ野球選手会と、「働くを変える」という経営理念を掲げるSBヒューマンキャピタルとの想いが合致しスタートした。2014年12月のサービス開始より、日本プロ野球選手会における活動の中心として推進した森事務局長に、改めてプロ野球選手のセカンドキャリアに対する想いについてインタビューした。
プロとして自分の強みをどう発揮してどう生き抜いていくか。この考え方は社会に出ても同じ。
高橋そもそも森さん自身はどういう経緯で今のようにプロ野球選手会でお仕事されるようになったのでしょうか?
森現役を辞めてしばらくはサラリーマンをやっていて、その後保険の代理店で働いていたのですが、そのタイミングで前任の松原さんから声をかけていただいたのがきっかけです。といってもそのタイミングですぐに選手会に入ったわけではなくて、その後何年か経った2000年から働き始めました。
高橋選手会に入ってからはどういうお仕事をされましたか?
森最初は選手の年俸を調査したり、登録日数の管理をしたりといった事務作業もやりましたし、あとは社団法人の事業として野球の普及のために現役選手やOBを連れて野球教室などの運営もやりましたね。
また、そういう活動と合わせて、やはり現役選手がいかに悔いなく引退を迎えられるようにサポートするか、そのために必要な制度をどう作ることができるかといった部分に課題意識を持つようになりました。もちろん選手個人個人で能力も環境も違うので、すべての選手を平等にサポートすることは難しいのですが、全体的にどう最適解を見つけられるかという部分は選手会として考えていかなければ、と思っています。
高橋そういう意味では森さんご自身もプロとして活躍されて、社会人として就職もされて、まさにセカンドキャリアを経験した1人だと思うのですが、プロ野球選手としての経験が活きていると思うことってありますか?その辺は今の現役選手もまさに気になるところだと思うのですが。
森うーん、礼儀と根性、あとは忍耐ですかね(笑)
一同笑
森もっとちゃんと説明すると、プロ野球の世界って野球におけるエリートが集まっていると思うんですが、そのエリート同士の競争の中でいかに自分の強みを見つけて生き抜いていくかを考え続けないといけないと思います。そういう考え方は社会に出ても役に立つと思いますね。
より多くの選択肢を持って、引退後のキャリアを考えてほしい。
杉本逆に、社会に出るにあたって考え方を変えるべき部分はありますか?
森僕もそうですけど、これまでの人生ずっと野球しかやってこなかったので、そこのスイッチをどう切りかえるかは大変でしたね。ここのスイッチがきちんと切り替えられて、自分のこれからの人生と向き合う覚悟ができれば、さまざまな仕事の選択肢が出てくると思います。社会人一年生というところをいかに受け入れられるかですかね。
杉本我々もイーキャリアNEXTFIELDを通して、さまざまな選手と面談をしていますが、みなさん社会にどういう仕事があるか知らないケースも多いので、それを選択肢としてきちんと提示したいとは思っています。たとえば販売職や営業職などは比較的イメージしやすいと思うのですが、その他の職種などはまだ知らないが故に選択肢に入ってこないケースも多いと思いますので。
森確かにキャリアを考える上で選択肢は多い方がいいですね。たとえば車好きな選手も多いですが、車に携わる仕事でも販売以外にいろいろあるじゃないですか。選手によって個人差はありますけど、一般社会でいう定年まで働く選手はいませんよね。必ずどこかでセカンドキャリアについて考えることになると思うので、現役時代から引退後のキャリアを頭の片隅に置いていろいろな世界を見ておくと良いのかなと思っています。いろいろな人に会って話を聞くことも現役生活の役にも立つと思います。シーズン中は中々人に会ったりそういうことを考えるのは難しいと思いますが、シーズンオフには時間が持てると思います。また同じチームで戦力外通告を受ける選手も出たりすると思うので、そういうのをきっかけに自分自身がその立場になったときのことを考えてくれるといいなと思いますね。
高橋これまでお話しいただいたような、選手が引退後のキャリアについてより多くの選択肢を持てるようにするためには、どのようなものが必要ですか?我々もキャンプにお邪魔してキャリアについての講義やワークショップなどを実施させていただいていますが、もっと良くするために何ができるか考えたいと思っていまして。
森一番はやはり選手の意識を変えていくことだと思います。野球界に限らず、アスリート全体に言えることだと思っているのですが、引退後のキャリアについて選手会のような団体・組織がきちんと教育していくことが必要だと思いますね。第一線で活躍している選手ほど、そういう意識が高い傾向にあって、引退後のキャリアをきちんと考えるからこそ現役時代にも結果を残せるのかなと思います。
また、もっと選手会に対して気軽に悩みを相談してもらえるといいなと思っています。我々も体制面含めて精一杯サポートしたいと思っていますので。
選手一人ひとりの能力や適性にマッチする仕事を提供していきたい。
杉本現在イーキャリアNEXTFIELDには約600社の企業が参画し、プロ野球選手を採用したいと手を挙げていただいていますが、そうした企業側に要望はありますか?
森これだけの企業からお声がけいただいているのは非常に有難いことだと思っています。みなさん何かしらプロとして活躍してきた選手たちに期待してくださってるのだと思いますので、あとは野球選手としてひとくくりに見るのではなく、個々の能力や適性を見て本人にとってもやりがいある仕事を任せてもらえるといいなと思いますね。