2008/04/05
代表取締役社長兼最高経営責任者|佐々木睦夫氏 シーサー株式会社

ブログを核にしたサービス連携とユーザーへの誠実さで躍進
手軽に情報発信ができるブログ。今でこそ誰もが利用するツールとなったが、登場当時は認知度も低く、まして利用するユーザーはごくわずかであった。そんなブログのビジネスにいち早く飛び込み、成長を続けてきた企業の一つがシーサーである。
シーサーは、月間で1100万人が利用する巨大なブログサービス「Seesaaブログ」を提供している。ユーザーから高い支持を受けるブログシステムの秘密を、代表取締役社長兼最高経営責任者の佐々木睦夫氏に聞く。
ITmedia インターネットの分野では欠かせないツールとなったブログですが、なぜこのブログサービスに注目したのでしょう
佐々木 私自身はオン・ザ・エッヂ(現ライブドア)に在職していた35歳の当時、何か新たなビジネスができたらということで、インターネットの世界へ飛び込む決心をしました。自らインターネットに真正面から向き合ったのは、シーサー設立のときからです。

- シーサー 代表取締役社長兼最高経営責任者 佐々木睦夫氏
シーサーの設立については、インターネットを使って何かをしたいと、前職の同僚でもあった創業者仲間と酒を酌み交わしたりしながら語り合ったのですが、当初はブログサービスをやるつもりはありませんでした。まずはネットのインタラクティブ性に注目して、ユーザーの作ったデジタルコンテンツを流通させる場を提供したら面白いのではないかと考えました。仕組みそのものはすぐに実現できそうだったのですが、自分たちの少ない資本では広告を出してそれをプロモーションするといったことはできなかったわけです。
それならば、自分たちでメディアを立ち上げて広告の場を作ってしまえばよいのではと、考えてできあがったのがブログです。トラフィックを集めて、これをトリガーにマーケットプレースの活性化が図れるだろうと見込んだのです。こうしてまずブログサービスを作りました。シーサーの設立は2003年10月ですが、12月にはすでにブログサービスを開始していました。
ITmedia 当時の国内での認知度は?
佐々木 当時は国内にはブログサービスなどほとんど存在しませんでした。従って、認知度もありません。しかしながら、米国では一部のジャーナリストが利用し始めたことで、その有効性に注目が集まっていました。
ブログサービスの開始と同時に、法人向けにSeesaaブログを開設できるブログエンジンの販売も始めました。ただ、営業に回っても理解をしてもらえず、苦労しました。「知っているけれど有効性も分からない」からということで、引き合いはほとんどありませんでした。
ユーザーもすぐに集まるわけではなく、社員のブログだけがアクティブになっているといった状況でした。しかし翌年になると、ココログのサービスが開始され、ようやくブームに火が付きました。
ITmedia SNSなどエンドユーザーが情報発信する形態は今でこそ一般的になりましたが、当時はどのように発展していくと予想していましたか。
佐々木 一般のユーザーが簡単に情報発信でき、かつ一方通行でない流れが生まれることで、まったく新しいメディアとして育っていくだろうと見ていました。インターネットの新たな「波」になるだろうと期待も大きかったことを覚えています。
ITmedia 今や月間で1100万人が利用する巨大なブログサービスになっています。
佐々木 広告を出したことはありませんので、これはまさにユーザーのクチコミによるものといえるでしょう。サービス開始当初から、使い勝手や機能の豊富さといった点で良い評判を頂いていました。ブログサービスで先行していたライブドアには勝つつもりでやってきましたから、今の規模には驚きもありますが、さらに先にも進んでいかなければと考えています。
ITmedia 高機能なブログであることが初期においては差別化の要因でした。この点は意図していたのでしょうか。
佐々木 特にユーザーからの要望を常にキャッチアップして取り込んでいくということをやり続けてきました。小回りの利く会社でしたし、自社開発で行ってきましたから、今日考えたことが明日にはできあがっている(提供されている)という形でやってきました。
ITmedia 企業が社内の情報流通のためにブログを利用している例もあります。こうした動きをどのように見ますか。
佐々木 企業のコミュニケーションツールとしてのブログですが、企業が持つ文化によってその有効性は変わっていくと思います。ツールとしては使い道はあると思いますが、有効に使えるかどうかはその企業次第でしょう。匿名性を一つの利点としてきたブログが記名で書かなければならなくなったり、情報発信のルールが決められて自由に書き込めなくなったりといった状況では、果たして本当にブログが有効なのかといった議論もあります。
ITmedia シーサーの強みとは何でしょう。
佐々木 シーサーでは、サービスとしてSeesaaブログ、Seesaaショッピング、Seesaaドロップシッピング、Seesaaダウンロードと4つを提供しており、相互にシナジー効果のあるような連携が図られています。ショッピングの商品の情報をブログの RSSで伝えたり、一方アフィリエイトタグが発行されることでユーザーにもメリットがあります。このように個々が独立しているのではなく、相互に影響を与えながら運営されているところが強みです。
法人向けエンジンも、現在では20社以上のブログシステムでSeesaaブログが採用されています。現在われわれが持っている広告配信の仕組みをここにも提供することで、開発や運営の手間を掛けることなく広告配信が可能になります。また、ほかのCGM(Consumer Generated Media:消費者生成メディア)にもこの方法を適用することを進めています。シーサーが提供する基盤をインターネット上でどんどん利用していただきたく、実は設立当初から「Seesaaプラットフォーム」構想という名前を付けてがんばっています。

- 「シーサーの基盤を広げていくことで、ユーザーにより良いサービスが提供できるようになると佐々木氏
ITmedia こうしたサービスを提供しているシーサーの社員は、どのような人々なのでしょうか。
佐々木 社員は現在30名ほどですが、それぞれがあらゆる仕事をこなしているといった感じです。例えば、技術スキルを持っている人間が開発をやる一方で、自ら知恵を絞った企画をあげるといったこともやっています。社員全員の力によって今のシーサーは支えられているのです。
会社を設立してから数年間は創業当時からのメンバーばかりでしたが、最近では若い人々も多くなってきました。こうした人材をきちんと育てていくこともとても大切だと思います。
ITmedia 創業者としては若い人々に何を伝え、何を求めますか。さらに今後の方向性についてもお聞かせください。
佐々木 創業者が考えていることと、若い社員が考えていることは必ずしも正確に一致するものではないと考えています。その人なりの立場や考え方といったものがあるからです。しかしながら一つ言えることは、ユーザーにとって良いサービスを作っていくことが重要だということです。常にユーザー目線を保ちつつ、ユーザーに喜ばれるものを作っていければ、必ず良い結果がついてきます。良いものを自分で企画して、業務の枠を超えながら仕事を開拓していく人は、傍で見ていても楽しそうです。会社をどんどん盛り上げていき、むしろ自分が新たな創業者なのだというくらいの意気込みでやってもらえるといいですね。「勤務する」のではなく、自らのスキルを上げるためにもっともっと会社というものを使い倒してほしいのです。そうすれば、ユーザーへのより良いサービスも生まれてくると信じています。
今後もブログサービスが中心であることに変わりはありませんが、メディア事業としてさらにトラフィックを増やしながら価値を高めていきたいと思います。必要であれば、ほかのサービスとの連携やブログネットワークの形成などもどんどん行っていくつもりです。市場は勝ち負けよりもシェアリングで大きくなっていくものだと考えていますので。

- 社名の由来については、「実は語感から決めたものなんです」と意外な答えが......
本記事は、2008年1月のITmediaエンタープライズに掲載されたものを転載しております。