2008/01/30
アリエル・ネットワーク株式会社 ブロガー|徳力 基彦 情報発信するビジネスパーソンの「インターネット活用術」
自分から情報を発信することでチャンスが広がった

徳力氏がインターネットをよく利用するようになったのは、アリエル・ネットワーク入社後のこと。
「それまであまり詳しくなかったインターネットに関する情報や知識を深めたくて、ネット検索をしました。すると、ビジネスパーソンが個人の経験や考えをもとに、テクノロジーやビジネスについて語るブログによく行き当たるんですね。そして、その情報が自分の仕事に役立つんですよ」
徳力氏は最初、自分から情報発信することには消極的だったが、2004 年頃、業界内に知人を増やしたいと思い、SNS に加入。しかし思惑とは違って、なかなか知人が増えなかった。
「ここで気付いた。待っているのじゃなくて自分から行動を起こさなければダメだ、と。だからSNS でベンチャー系インターネット企業に勤めている人たちのコミュニティに参加して、積極的に書き込みをするようにしました。また、梅田望夫さんのブログに刺激を受けたこともあり、仕事に関する情報を発信するブログを立ち上げ、自分から発信するようになりました」
その行動はネット上だけにとどまらなかった。SNS やブログを通じて知り合った人のセミナーや講演会などにも、積極的に参加するようになる。すると、そこでまた新たな出会いがあり、徐々に人間関係が広がっていく。そして、知り合った優れた書き手を世間に紹介したいと思うようになり始めたのが、影響力のある書き手を発掘する「アルファブロガー・アワード」だ。そしてこのイベントを通じて、また活動が広がった。
「ブログは僕の可能性を大きく広げてくれたと思っています。ときどき『無料で情報提供をするのは損ではないか』とおっしゃる人もいますが、それは違うと思う。ブログは無料でも、それが縁で仕事が増えることもあるし、自己啓発にもなる。だからブログを書くことには大きなメリットがあると思います」
個人が情報発信できるようになったことでマーケティングが変わる
徳力氏は社員がブログを開設するメリットは社員個人だけではなく、企業にもあるという。
「あるアメリカの大手ソフトウェアメーカーは、数年前から会社側が率先して社員にブログを書かせています。すると、社員のブログを読んだ読者から『ひどい会社だと思ったけど、社員は結構いい人もいるじゃない』といった評価が多くあり、企業のイメージアップにつながったんです」
しかしブログに代表されるCGM には、企業の悪い情報が瞬く間に広がるといった危険性もある。しかし徳力氏は、それはデメリットというよりも“変化”だという。
「広告を見た人の多くが、インターネットを使って、商品やサービスをより深く知ろうとしたり、それらの商品やサービスを使った感想を発信したりするようになってきています。企業とユーザーがお互いに情報をやり取りしながら、商品を広めていくことを『カンバセーショナル・マーケティング』といいますが、インターネット時代のマーケティングはこういった形を取ることが重要になると思います」
カンバセーショナル・マーケティングは、手間が掛かる。しかし「新規開拓よりは顧客を維持する方がコストが安い」という徳力氏の言葉には説得力がある。
「ブログなどのインターネットメディアを使えば0 に近いコストで情報発信ができる。そして、誠実な商売をしていればロングテール・ビジネスが成り立つ。資金力があまりない中小やベンチャー企業でも勝負しやすい、そして、個人にとっては起業がしやすい時代になったのではないでしょうか」
インターネットはもっとビジネスに役立つ(1)
RSS リーダーを有効利用しよう
莫大なサイトをチェックしている徳力氏に、インターネットを使った効率的な情報収集のコツを聞いた。
徳力氏は、400 ~500 のサイトをRSS リーダーに入れており、登録サイトをチェックするのに要する時間は、約30 分。なぜ、これほど短時間に情報がチェックできるのか。
「僕は更新情報をチェックしても、サイトは滅多に開かないし、読まない。サーッと見て気になる記事をクリッピング。あとで必要を感じたらクリッピングした記事だけまとめて読むようにしています」
また、RSS リーダーへのキーワード登録も、仕事の効率化に役立つ。
「たとえば自分の会社をキーワード登録しておくと便利です。新しい記事が上がったときにすぐにチェックできますから。かなり仕事のスピードがアップします」
インターネットはもっとビジネスに役立つ(2)
他人の力も借りよう
「基本は読まない」徳力氏だが、毎日読むブログも数カ所ある。それを徳力氏は「師匠ブログ」と呼んでいる。
「インターネット、テクノロジー、ビジネスなど、自分が必要と思う分野ごとに『この人の発信する情報は役に立つ』という“師匠”を探しておくといいと思います。師匠のブログを読むと、師匠がチェック済みの『整理された情報』が手に入るので非常に効率的」
また、他人が作ったソーシャルブックマーク(=ネットワーク上で他者とブックマークを共有できるサービス)もよく利用すると言う。
「自分でサイトを探す、ブックマークをする手間が省けます。僕はこれもRSSリーダーに登録してあります。だから、ブックマークされている記事に更新があればすぐに分かる」
インターネットはもっとビジネスに役立つ(3)
検索サイトをフル活用する

「Google Trends」という、特定のキーワードについて、検索件数の増減の時間的な推移をグラフで見られる検索サイトがある。
「『はてな』などには、そのキーワードに言及したブログ数の推移をグラフで見られるサービスがあります。2 つのグラフを重ねてみると、マーケティングに活用できそうな面白いデータになり、リポートに説得力が増すなど、ビジネスに役立ちます。検索サイトはどんどん新しいサービスが誕生しますから、こまめにチェックしておくと良いでしょう」
そして、最後にこう締めくくってくれた。
「若い人はインターネットに抵抗感がないが、年配の人はインターネットを使いこなせない人がまだ多いですね。僕はアナログも知っている世代だから、若い人と年配の人の橋渡しをする、お互いの言葉を翻訳する役に立ちたいと思っています。でも、若い人の立場でいうと、年配の人が知らない、できないことができるというのは大きなチャンスだと思う。もっともっとインターネットを活用して、チャンスを広げていってください」
- 徳力 基彦(とくりき・もとひこ)
- アリエル・ネットワーク株式会社 ブロガー
1972 年生まれ。1995 年、大学卒業後、NTT に入社。法人営業やIR 活動に従事した後、IT 系コンサルティングファームを経て、2001 年アリエル・ネットワークに入社。2006 年ブログネットワークのアジャメディア・ネットワーク設立時から運営に参画、2007 年7 月、取締役就任。